2007-02-12

The Spectral Sorrows - Edge of Sanity

Spectral Sorrows

1993年リリースの3rdアルバムです。
スウェーデンはフィンスボルグという、ストックホルムから約200km離れた町にて結成されました。

メロディック・デス・メタルという音楽はいつどこから誰が始めた音楽であるのかというのは、CARCASSやらAT THE GATESやら諸説あり、本バンドの名もよくその議論の中で挙がります。実際のところデス・メタルという音楽は元々スラッシュメタルの過激な部分のみを抽出することによって成立した音楽であり、その存在意義はメロディに傾倒していったスラッシュメタルを拒絶しベクトルを異にするアンチテーゼのようなものであったのですが、そのデスメタルに対してまた先祖返りの如くメロディを導入するという発想自体は、実は特に難解ではなく、それに近いことをやっているバンドもいくつかありました。逆に、曲の構成や演奏的にデス・メタルにメロディを導入せざるを得ないバンドもあったのです。純粋にデスメタルだけで曲を構成するのも、しんどいと思うんですよ実際。

ではなぜメロディックデスがジャンルとして確立されたかというと、そのメロディの導入をボーカルではなくギターリフで行ったというところが肝要であり、それゆえメタルファンに受け入れられたという理由もあるのです。メロディ導入によりどうしても音的に弱くなってしまうボーカルをデスボイスのまま、ギターにメロディを担当させヘビィさを保つという発想が、実はコロンブス的発想というよりは、革命的手法だったのではないかと思います。

そんなギターリフでメロディを奏でる典型的メロディックデスのイメージを一番最初に形作り、そして世に広めたのはこのバンドのこのアルバムであると私は思います。デスメタルの過激なリズムセクションを伴い、まるでジャーマンメタルのようにギターリフが哀愁全開のメロディを奏でながら疾走する…いわゆる北欧メロデスの原型(というかこの時をして既に完成形とも言える)がここにあります。

本作において、Edge of Sanityの掲げたメロディックデスは一旦完成形が提示されました。その方程式を忠実に守りつつ、曲の構成美を突き詰めメロディの質を向上させた4作目の『Purgatory Afterglow』は、メロディックデスの完成形の一つと言っていい名盤です。しかしながら、ここで本作を紹介した理由は、やはりメロディックデスの創始的アルバムであると同時に、個人的にメロディックデスの可能性を感じた最初のアルバムであるからです。いや、実際このアルバム聞いたあとはしばらくメロデス系しか買いませんでしたもの。

実際にはIn FlamesやDark Tranquillity、Sentencedなどもこの時期には活動を開始しており、このアルバムがメロディックデスに大きく影響を与えたかという意味では、多少異なるかも知れません。しかしながら、本アルバムを聴いていると、非常に音楽的に多様な要素が入っていることに気付きます。疾走一辺倒ばかりではなく、この時期からクリーン・ヴォイスを使い分けたり、民謡的メロディを導入したり、曲展開に緩急をつけたり…。このバンドのメロディの根底はゴシックからの影響であり、それを示唆する曲も本アルバムにはしっかりリストされています。

現在、当時の北欧メロディックデスに影響されたアメリカのメタルコア系バンドがいくつも登場し、市場を賑わせています。しかし、彼らのやっている音楽は既に、この時点でEdge of Sanityが予言していた内容である…というのはあまりに端的で乱暴でしょうかね。とりあえず、当時は非常に荒涼とした氷原のような印象を本アルバムの音像には持っていたのですが、今聞くとそのメロディや曲構成には懐かしさと共に暖かさすら感じます。聞いたことのないメロデスファンの方はぜひ一聴を。

My Favorite Song : The Masque

Similar Artists : In Flames,Dark Tranquillity,Amorphis

0 コメント: