2007-04-06

Psychoschizophrenia - Lillian Axe

(…写真がありませんでした。何故に!?こんな名盤が)

1993年リリースの4thアルバムです。
アメリカのバンドです。デビュー当初はアラバマ、ルイジアナあたりが活動拠点だったようですね。

初めてこのアルバムを聴いた時の感想は、正に「なんだこりゃ!?」でした。
このアルバムを聴くまでの私のLillian Axeに対する評価は良質のアメリカン・ハード・ポップバンドであり、Enuff Z'nuffとかDanger Dangerとか、そういった類のカテゴリに存在するバンドであり、このアルバムも勿論それを期待して買ったわけです。

そして1曲目のCrucifiedを聴いた時、そのギターの音にちょっと嫌な予感が走りました。時代は当時オルタナティブ・ロックやグランジが流行りであり、そういうものに影響を受けたバンドが実際にはまったく自分たちの個性にあっていないにも関わらずヘビィでダークな曲調に方向転換し、結果駄作としか言えないアルバムを作成したりしていた時期だったからです。Lillian Axeお前もかと。

しかしながら1曲目は多少エッジの効いた曲調だったもののメロディのポップさは健在で、まぁいいじゃなーい、と思っていた矢先、次のDeepfreezeですよ。初めて聴いた時思いましたね。「こんなのシラフじゃ書けねーよ。絶対キメてつくったろ」と。それほど曲構成がアバンギャルドで、しかしながら印象に残るメロディで、ただただ凄ぇーと感じたのを今でも覚えています。

次の曲は比較的まともな今までのLillian Axeでしたが、それ以降はやはり雰囲気が暗いのか明るいのかわからない曲調とともに実に印象的なメロディを伴った独特の曲が流れ続けます。そう、このアルバムでは元々バンドにあった特異なポップさが、時代の潮流であるヘビィさと奇跡的に、そして変態的に融合しているのです。その様はサイケでもあり、プログレ風でもあり、英国風でもあり、中東風でもあり、しかしながらメロディの根底はアメリカン・ポップという実に形容しにくい音楽となりました。

まぁアルバム全部がこんな感じではなく、従来路線の曲もいくつか入っているのですが、アルバムの構成から言えばそれはどちらかというと休みの部類であり、本アルバムの本質は、そのアメリカン・アバンギャルド・ハードポップさにあります。この衝撃は10年以上の時を経ても変わりなく、またこういう類のアルバムはそれ以来私はあまり記憶にありません。グランジとの融合という面で語られることの多いこのアルバムですが、個人的にはグランジとは関係なく、このバンド単体での正常な進化だったのではないかとも思います。

しかしながらこれだけは言えます。本アルバムが気に入る人はおそらく変わり者です。クセのある曲調やメロディが好きな人は是非聞いてみてください。唯一無二のハード・ポップが聴けますよ。

似てるバンドとしては、一時期Def Leppardなんかもこんな感じの曲をやっていたように思います。あとはアメリカン・ハードポップとして文中にも出てきたEnuff Z'nuffでしょうか。Night Rangerあたりでもいけるかと。あとかなーり違いますがちょっと変なメロディという意味ではRageとか…まぁ全然違うな。一風変わった独創的なハード・ポップを求めている人どうぞ!

My Favorite Song : Deepfreeze

Similar Artists: Def Leppard,Enuff Z'nuff,Night Ranger

2007-04-02

特別編 - Punkspring07各バンド感想

当日の幕張は暑さ的にはちょうど良く、暴れるには絶好のコンディションといった感じでした。
人はやたら多かったですね。次回には会場変えなきゃだめじゃない?
会場のTシャツ率はPizza of Death、Fuck ken記載ものとEllegarden、ホルモンが目立ち、続いてNoFXとAllisterといったところでしょうか。あー一人ずつだけどAnthraxとSlayer見つけました。
そんなわけで直接見たバンドたちの雑感を適当に書いていきます。

・Link
 当日入場後直接グッズ売り場にいったのですが、混雑のためマキシマムザホルモンがみられなくなりそうだったので途中で断念。一番欲しかったTHE RED JUMPSUIT APPARATUSは会場見る限り無かったみたいだし。とりあえず会場に戻ると、ちょうど本バンドが演奏を終わろうとしているところでした。
 なので最後の1曲しか聴いていませんので感想は割愛。ただ場の雰囲気はとてもよく、Opening Actとしてはその責務を十分果たす盛り上がりだったと思います。

・マキシマムザホルモン
 会場の盛り上がりは絶対3番目に出てくるバンドの盛り上がりではなかったです。曲もほとんど新譜からのプレイでしたが、会場の認知度も高くまるで全員が曲を知っているかのような乗り方でした。絶望ビリーを初め、新譜の曲は今までで最高のヘビィネス&メロディアスさであり本当にいい曲揃いですね。もう既に日本を代表するミクスチャーバンドになっていると思うし本当に30分じゃもったいない!もっと枕営業頑張ってくださいませ。
 ところで「うるさーい!ここからは全部IRON MAIDENのカバーになります!」には当日一番笑いました。

・DEAD TO ME
 初聴でしたが、昔からあるBad Religion風の典型的爆走形パンクと思いました。場の雰囲気的には前のホルモンに完全に持って行かれてましたが、演奏もうまいと思いましたし、この手のスタイルではかなり上級の部類に入るバンドだと思います。途中まで聴いて別ステージのB-DASHへ。

・B-DASH
 こちらもかなり盛り上がってました。個人的に知名度は今いちかと思っていたのですが、認識不足でした。会場的には不利かなと思われるグリーンステージでも、かなり後ろの方でも実に切れのいいサウンドが聴けました。特にドラムの人が頑張っていたように思いました。最後まで聴いていたかったのですが、THE SUMMER OBSESSIONが見たかったので後ろ髪を引かれつつ移動。本バンドは今度しっかり聞き直してみたいと思います。

・THE SUMMER OBSESSION
 本日の期待してたけど残念バンドその1。本来さわやかでメロウな曲が持ち味だと思っていたのですが、会場では勢い主体で爆走気味の演奏を行っていました。まぁそれはそれでいいんですが、個人的に期待していた雰囲気と全く異なっていたので残念です。演奏はボーカルは高音も出てうまいと思いました。んでこいつら3人だっけ?

・THE RED JUMPSUIT APPARATUS
 本日の期待してたけど残念バンドその2。いや演奏は特に問題なかったし、選曲もまぁアルバム1枚なんですが私の好きなFalse Pretenseとかやってくれたんで文句はないんですよ。でもね、ボーカルが全然高音が出ていなく、微妙なスクリームによるフェイクを繰り返すだけ。でも途中で謝ってたようにも聞こえたから、普段はもっと声が出てて当日は調子が悪かったのでしょうか?もう一度単独でもいいから見たいです。いい曲を書くバンドなんだから頑張れ。何ならSAOSINのボーカル連れてこい。

・9mm Parabellum bullet
 初聴。BRANKY JET CITYと中島みゆきがメタルコアやったらこんな感じになるんでしょうか。感動させられるよりも感心させられるタイプの、まだかなり限定された範囲でもてはやされる音楽という印象を受けました。でもかなり好きな部類かも。これから成長していって大化けする可能性大。本日の収穫でした。

・THE TOY DOLLS
 本日の収穫その2。正にライブ・アクトという言葉がぴったりの、テクニックだけではない演奏のうまさは見てて感動しました。こういうバンドはもっと評価されてしかるべき!彼らを見られただけで、この会場に来た意味がありました。楽しかったー。つーか3ピースの一つの完成系をみたような気がする。

・KEN YOKOYAMA
 演奏は見てて余裕が感じられました。ベテランの域なんすかね。まぁもともと曲があまり好きなタイプではなく、ライブで聴いてもそれは一緒だったですねごめんなさい。途中でPROTEST THE HEROへ移動。

・PROTEST THE HERO
 残念な点が2つ。彼らはパンクというよりはメタルコア、しかもプログレ風味の複雑な曲構成が持ち味なので、事前に曲を知っていないと魅力も半減するタイプのバンドだと思います。大きいステージの方が良かったんじゃないのかな。つーかLOUDPARKでいいのにこのバンド。あと1つは、なんでDROPKICK MARPHYSと重なるんだよ!最初の2曲のみで移動。無念。STERIOGRAMも聴きたかったなぁ。

・DROPKICK MARPHYS
 曲の盛り上がる部分で前に出てきたのが、バグパイプとアコーディオンだった図にはちょっと笑わせてもらいました。でも実に男の香りのするアイリッシュ・パンクは掛け値なしに格好良かったです。音がちょっとつぶれていてあまり聞こえない楽器もありましたか。最後の方はバグパイプも見当たらなかったし。

・ELLEGARDEN
 本日の収穫その3。新旧織り交ぜたセットリストの曲の良さは今回参加アーティストの中で一番だったのではないでしょうか?本バンドはちょっと離れてみてましたが、アルバムでいいや的な私が、まさか感動させてもらえるとは思いませんでした。外野に流されるとこでしたが、やっぱり自分が好きな曲はどうやっても好きなんですね。

・JIMMY EAT WORLD
 エモの王道バンドらしく、聴かせる演奏でございました。聴衆も解っているようで、今までのバンドとは歓声の出方が違ったのが印象的でした。本当はTHE SUMMER OBSESSIONもこんな感じでやって欲しかったのになぁ…。全部聴きたかったけど、途中でALLISTERへ移動。まぁアルバムでいいかな、とか思ってしまいましたすいません。

・ALLISTER
 本日の収穫その4。パンクの楽しさを表現するのに既存の日本の曲を使うのはちょっと卑怯と思いながらも、ノってしまうということは出来がよいということなんでしょうね。そしてまさかドラえもんのカバーやるとは!曲自体は超短かったけどTHE TOY DOLLSと同様、参加することで楽しめるバンドだと思いました。
 ただALLISTERって活動休止になるんですね…残念でした。もっと早く出会っていれば。

・NEW FOUND GLORY
 個人的本日のイチバン。彼らの曲がこんなにライブ映えするとは思っていませんでした。曲も矢継ぎ早にやっていた感じがありましたし、ライブ・バンドだったんですねぇ。良かったです。でもあのベースが自分の乳首をなめるパフォーマンスは意味が全くないと思いました。バカをアピールするぐらいなら演奏だけやっててくださいデブ。

・NoFX
 本日の期待してたけど残念バンドその3。もっとガンガン曲をやってくれるのかと思いきや、かなりの割合をMCが占めていてテンポが殺されていたように思います。まぁ、そんなことをこの大御所バンドに指摘する意味なんて全くなく、生粋のファンの人はそれが解ってて楽しんでいるんでしょうけどね。トランペットと美声はかっこよすぎて笑わせてもらいました。パンクの何でもありっぽさを一番感じたのはこのバンドでした。

 以上、全体的には概ね満足でありました。来年は何が来るのかを楽しみにしながらまとめを終わります。残念ながら今回来日しなかったPARAMOREの今後のご活躍を期待しております。まぁ多分9mm Parabellum bulletの方が上だけどね!

特別編 - Punkspring07雑感

突然ですが特別編です。行ってきましたPUNKSPRING。
元来生粋のメタラーであるこの私、最近メタルコアを介してパンクにも趣味を持ちつつあったのですが、今回のPUNKSPRINGは面子も個人的になかなかツボだったということもあり、フェス系ながらパンクのライブへ初参加してきました。
そんなわけで同じイベント系列のメタル系イベントであるLOUDPARKにも参加したこの私が、2つの違いを比較しながら、というかメタル好きからの視点での感想を述べてみたいと思います。

・女の子が多い
近年はメタルのライブにも女性の参加率はなかなか高いですが、比じゃないですね。全体の半分超えてるんじゃなかったかなぁ。
参加しているバンドの面子にもよるんだろうけど、でもELLEGARDENとかPIZZA OF DEATH関連だけでなく、NEW FOUND GLORYやらホルモンやらAPPARATUSやらDROPKICK MURPHYSでも盛り上がれるってことは、多分パンク自体を好きな子が結構多いんでしょう。
特に女性だけで数人のグループってのを良く見かけたように思います。メタルではさすがにそれはないもんなぁ(Dir en greyはいましたけど、あれはグループっていうよりチームだったような)。LOUDPARKでは逆に一人で来てそうな女の子は少々見ましたけど。周りに同じ趣味がいないのかなぁとちょっと心配になりましたよw。
まぁ今回LOUDPARKに対して女性トイレが増設されていたにも関わらず、至る所の女性トイレに行列が出来ていたのは、少々カルチャーショックでしたw

・若い
これはさすがパンクと言わざるを得ませんw。NoFXやDROPKICK MURPHYSのようなベテランバンドも結構いたんですが、全体的に参加者が若かったように見えまして、明らかにおっさんっていう人を少なくとも私はほとんど見ませんでした。というか、先に挙げたバンド目的で来た人って、実は少なかったんじゃないのかな?あーあと、英語だろうが日本語だろうが関係なく盛り上がれますねここの人たちは。これも若さ所以なんでしょうか?それともそれがパンクというジャンルなのかな?

・モッシュに慣れている
今回私の見ていた周りでも結構激しめのモッシュが出来ていましたが、思ったより怪我もなく楽しんでいるように見えました。見た目は派手なんですけど、何か頭振るところではみんな合わせて頭振って、ぶつかりあうときは必ず背中からみたいな、怪我のしないモッシュの方法やルールみたいなものを知っているように見えました。LOUDPARKの方がなんというか後ろは整然としてましたが、前の方は乱暴でしたね。あとやたら踊りが激しい人には太った人が多かったw

・音がいい
今回聴いたほとんどのバンドの音が、LOUDPARKで聴いた音のほとんどより良かったです。勿論あの空間なんで理想的な音響とは決して言えませんが、各楽器の音がきちんと聞き分けられる程度にはなってました。後ろの壁がぶち抜きだったのが多少関係あるのかな?何にせよ、今回は知らない曲でも曲の音像やメロディを聞き分けることが出来てその面では満足しています。おかげさまで参加バンド全てが、LOUDPARKの面子よりも演奏がうまく感じましたよ。実際にそうだったかどうかは次回LOUDPARKで確認することにします。

・決してビッグバンドが一番盛り上がるわけではない
これも「あぁ違うのかな?」と思った一つ。LOUDPARKでのMEGADETHやSLAYERのような大トリの大団円のような感動が、今回のPUNKSPRINGからは感じられませんでした。何というか、今回トリはNoFXだったのですが、バンドの雰囲気もよく言えばアットホーム、悪くいえばふざけあっててまとまっていない(いや、演奏自体はうまいし曲も悪くないんですが)、観客も全員が一体となっていたわけではなく前と後ろの温度差が結構あったように感じました。これもある意味パンクなんでしょうかね。黎明期のバンドがまだ第一線を張っているメタルに対して、流行廃りの世代交代が激しいのかも知れません。

まぁそんな感じで、個人的には(ちょっと年齢の壁を感じながらもw)楽しむことができました。あれですね、パンクもメタルも既に敷居や棲み分けってものがなくなりかけているのでは、とちょっと思ってましたが、こうやってみると結構まだ違う部分が見えてくるもので、非常におもしろかったです。
各バンドの感想も、メモ程度にそのうち残そうと思います。残念なのあり、感動したのあり…

2007-03-26

Pressure - Chroming Rose

(No Photo Image ... Sorry)

1992年の3rdアルバムです。
ドイツのバンドです。ただメンバー全員が生粋のドイツ人ではなく当時は東欧系のメンバーも入っていたようです。現在は…知りません。

今でも私の心に残る、非常に残念なアルバムです。
今まで聴いてきたアルバムの中で、その完成度に対して正当な評価が得られなかったアルバムを挙げるとすると、私の中では真っ先にこのアルバムが思い浮かんで来る、そんなアルバムです。

さて、本バンドを知っている人ならば、普通推薦するアルバムは1st『Louis XIV』、2nd『Garden Of Eden』を挙げることが絶対的に多いと思います。それには私も全く異論はなく、元々本バンドはHelloweenを筆頭とするメロディック・スピードメタルのカテゴリ内で語られるバンドであり、彼らのキャリアのピークも前述のアルバム2枚だったからです。

彼らの音楽とそのスタンスは独特で、確かにやってることは高品質スピードメタルなのですが、ギターの音がExodusのようなクランチ風味だったり、曲に(Hellowennでもたまにその風潮を感じることが出来る)コミカル調な面を更に強くした雰囲気があり、それがまたB級風味を醸しだし、本バンドの魅力の一つともなっておりました。

しかしながら、当の本人たちも多分気付いていたのでしょう。「今のままでは、これ以上バンドとしての発展は望めないだろう」と。
確かにジャーマン・メタルの中では十分にトップクラスの知名度でありながら、良くも悪くもジャーマン・メタルのB級臭さを一番強く感じさせるバンドではあり、このままでは「この位置止まり」というのは、聴いてる側からも伺い知ることが出来ました。

そこで彼らは一皮むけるために賭に出ます。HelloweenではなくAcceptからの正統進化を目指すかの如く、アルバムにミドルテンポの曲を1曲目から据え、スピード感を殺す代わりに重厚感と構成の質を高めたアルバムを作ってきたのです。そのメロディは高品質であり、実際彼らにこんな本格HMの曲を作成することができるのかというぐらい恰好良く、そして何よりアルバム名が示すように全ての曲がシリアスであり、緊張と気合いを感じさせてくれました。今までヨーデルやハッピーバースディをふざけたメタル曲にして世に放ってきたバンドとは思えません。また、アルバム内にスピード曲が全くないわけではなく、全てのアルバムを通しても最高級の出来である4.Skyline of the Worldなど、曲単体としてもアルバムの構成としても非常に優れた出来だったと思います。

しかしながら時代は彼らを見捨てることになります。まだ時代はメロディック・スピードメタルのニーズが高く、彼らのファンが欲していたのは退屈なミドル・テンポの正当派HMではなく、あくまで爽快感溢れる突っ走りスピードメタルだったのです。本バンドの従来からのファンにはアルバム全体を通して好意的な評価はされず、また本来こういった類の曲を好んで聴く人たちには、バンドのカテゴライズ面から、聴いてもらう機会すら得られませんでした。(まぁそれをバンドの責任にするのはお門違いであり、本来はプロモーションの問題なのでしょうが)

当時は少数ながら本アルバムを正当に評価するコメントも見た記憶がありますが、またまずかったのはこのアルバムのショックが尾を引いたのか、次の4th『New World』が焦点のぼやけた駄作だったことです。かくいう私も4thを聴いた時点でこのバンドの終焉を感じてしまったのですが、もし『Pressure』が正当に評価されるか、現在のような、例えばEdguyなんかが評価されている状況でリリースされていたとすれば、またその状況も変わっていたことでしょう。かく言う私も本アルバムの全体的な質の高さに気付いたのは、しばらく後だったように記憶しています。

あまりにも埋もれされるには惜しいアルバムなのですが…本当に彼らはついていませんでした。おそらく世の中にはこういう感じで消え去っていく才能は数多くあるのでしょう。それをリアルタイムで聴いて感じた私には、逆に本アルバムを今後忘れることはないと思います。

繰り返しになりますが、HMアルバムとしてはかなり上級の出来なんですよ。MegadethやらAnnihilatorが好きな人であれば必ず気に入ると思うし、Edguyなんかとも同系統であると言えるでしょう。もし機会があれば是非聞いてみてください。実に哀しいアルバムです。

My Favorite Song : Metamorphic Dreamer

Similar Artists:(このアルバム限定で) Accept,Annihilator,Edguy

2007-03-17

Saosin - Saosin

Saosin
Saosin


2006年リリースの1stアルバムです。
アメリカはオレンジカウンティのバンド、ということはAtreyuなんかと同郷ですね。

スクリームを排除したスクリーモというのは果たしてジャンルとして成り立つのかという疑問がありますが、本バンドは一応スクリーモの最終形態という呼称で紹介されることが多いです。ただし曲の中に目立った叫び声は入れられていなく、普通のエモバンドとして紹介されても問題ないと思いますが、確かにこのアルバムを聴く限りでは、スクリーモ側に置いておきたいのも納得出来ます。

曲のメロディや構成はThursdayなんかを想起させる、ある意味フォーマットの知られた憂いのある湿っぽさなんですが、このバンドの特徴はその楽曲に普通にハイトーンボーカルを用いて歌い上げていることにあると思います。正に「歌い上げるスクリーモ」。これによりドラマティックの度合いをスクリームなしで維持し、バンドの雰囲気としてスクリーモ風味を残すことに成功しているんだと思います。

この系統のバンドでは重要なメロディの質もいいし、演奏も実にタイトで、パンクっぽい軽さはあまり感じません。むしろLostprophetsとかHoobastankあたりに近いのではないでしょうか。もし彼らがThursdayをプレイしたらこんな感じの曲ができるんじゃないかなあ。

このバンドを聴いていて思ったのは、そもそもスクリーモというジャンルはバンドの表現力の稚拙さから出来たジャンルではないのか、ということ。もちろん感情の移入や曲の構成からスクリームを楽曲に取り入れること自体は否定はしませんし、効果的に使用しているバンドがあることは認めます。ただ過去に出てきた著名なスクリーモ系バンドがどんどん曲中のスクリーム比率を少なくしてきている事実と、挙げ句の果てには本バンドのような形で表現の質の高さを提示されて、しかもこのバンドをスクリーモという位置づけで定義してしまった場合、結局この手のタイプの楽曲ではスクリームする意味は全くないという結論には至らないんでしょうか?

上記の疑問に答えてくれるバンドは、個人的にはAlexisonfireとかSilversteinだと思っているのですが、今後本アルバムを超えるような質のアルバムを他のスクリーモバンドが提示できなかった場合、スクリーモというジャンルは過去の遺物として葬り去られていくでしょう。その意味である意味最後通牒のような意味合いを持つアルバムでもあります。

北欧やアイスランドあたりの北の方のバンドが持っている冷たい寂寥感も有した希有なバンドだと思います。ただ雰囲気としては冬というよりは寒い夏。そんなわけで是非聴いて欲しいアルバムですね。ちなみにジャケットのカブトムシはあまり気にしない方がいいと思います。

My Favorite Song : Follow the Feel

Similar Artists: Thursday,Silverstein,Lostprophets

2007-03-11

When Everything Falls - Haste the Day

When Everything Falls

2005年リリースの2ndアルバムです。
アメリカはインディアナポリスのメタルコアバンドです。

残念ながらこのバンド、2007年3月現在未だ日本デビューは果たしておりません。個人的には本バンドはメタルコア勢の中でもトップクラスの実力と楽曲をもっていると思いますので、何故日本デビューがこんなに遅れているのか不思議で仕方ありません。

スクリームパートの突進力、メロディアスパートの煽情力もそれぞれ一級品ですが、本バンドの魅力はそのメタル的なギターの音と使い方です。多分ギターはジャンルとしてはメタルが好きなんでしょうね。リフの使い方や、曲の所々に出てくるソロの切り込み方が、正にメタルに影響されました、といった風情で出てきます。いわゆるギター単独でその曲の主メロになりえるIn flames的なアプローチもありますし、Iron Maiden的なキメもあり、アメリカのバンドにしては曲の構成面での凝り方を特徴にした珍しいバンドだな、という感じを受けました。また、通常のメロディアスなパートでも、バックの演奏はメタルのような(というかメタルそのものですね)音で、あまりクサメロ臭が強くないため、メタルコアの中でくくらずに、いろんな層にアピールできる楽曲が多いと思います。

個人的には本バンドの弱点は、スクリーム時のボーカルの軽さかなと思います。軽めの音質で高いところをぎゃんぎゃん喚いているスタイルは劣化版Cradle of Filthといった感じで、ちょっと2流以下のブラックメタル的な印象をうけてしまいます。ここがもっと印象的に使えるようになると、このバンドはもっとかっこよくなると思うんですけど、それは次作以降に期待ということで。

まぁ結局この手のバンドってのは、どれだけ良質のメロディをサビに持ってこれるかというのがポイントの一つ(というか評価の8割方を占める)な訳ですが、このバンドはボーカルだけではなく、ギターリフも非常に練られた良質のメロディをもっており、これが他のメタルコア系のバンドと一線を画しているという感じです。1stも良いアルバムでしたが、本作では曲の構成がよりコンパクトになり、スクリームとメロディを歌い上げる部分のメリハリもついて、非常に良質のアルバムとなりました。

AtreyuとかIt Dies Todayとか、Triviumとか好きな人は聞いてみて絶対に損はないでしょうし、UnderoathやHopesfallも全然いけると思います。むしろAtreyuやHopesfall、Silversteinを洗練させたように感じる時もあるぐらい、完成されているバンドだと思います。

あと、このアルバムの最後の曲である12.Long Way Down。これGoo Goo Dollsというバンドのカバーなんですが、オリジナルより演奏がヘビィであり、テンポアップもしてノリがよくなっており、本バンドのオリジナルとしても遜色ないようなかっこいい出来になっています。(まぁ元々の曲もかっこいいんですけど)個人的に、カバーをうまく自分色にアレンジできるバンドは、その後の曲も変わらず大好きになる率が非常に高いので、本バンドには非常に期待しております。新作が2007年3月予定とのことで、またよければ良いなぁ。

My Favorite Song : When Everything falls

Similar Artists:Atreyu,It dies Today,Trivium,Underoath,Hopesfall

2007-02-26

Countdown to Extinction - Megadeth

Countdown to Extinction

1992年リリースの5thアルバムです。
アメリカの自称インテレクチュアル・スラッシュ・メタルバンドです。
未だによく意味がわかりませんが、一応起伏に富んだ曲をテクニカルに演奏する『知的な』スラッシュメタルバンドとのことです。
まぁこんな肩書き既に年寄りしか知りませんがね。

Metallica,Megadeth,Slayer,Anthrax…いわゆるスラッシュメタル四天王。今さらながら思い返してみると、これほどきっちり特徴が分かれているバンドが同一カテゴリの内で語られているのも実に面白いですね。多分知らない曲を聴かされても、この4バンドのうちどれかの曲です、さてどれでしょう?という質問ならば、必ず正答できる自信があります。まぁあくまで彼らが全盛期だったころの話で、現在の新曲を聞かされて答えを求められてもちょっと解らないかもしれませんが。

さて、そんな中で本バンドの特徴は、簡単に言うと重くザクザクとした金属的なギターリフと、妖しくねちっこい声とメロディのボーカルです。本アルバム以前のMegadethというのはその中でもどちらかというとその鋭角なギターリフから印象づけられる、テクニカルで冷たい印象を与える演奏が注目されていました。それがこの前のアルバムである『Rust In Peace』あたりから演奏主体から楽曲主体にベクトルが変わり、本アルバムではミドルテンポを主体とし、それまでのスラッシュ的なリフや曲展開を破棄したようなシンプルでヘビィな曲を揃えました。その結果、本バンドのもう一つの特徴である、メロディがクローズアップされることになったのです。

デイブ・ムステインの妖しくしかし印象的で魅力的なそのメロディは、より普遍的なヘビィメタルの特色を色濃くした本アルバムにてようやく主役となりました。楽しい時とかに鼻歌で歌うようなメロディではないのですが、夜道を一人で背中を丸めて歩いているときにふと口ずさむ様なメロディとでもいうのでしょうか。とにかくメロディメイカーとしての素質は非常に異質でありスラッシュメタルに止まらないことが、このアルバムにて証明できたのではないかと思います。当時はメタリカの『Metallica』の影響だとか思いましたが、あのブラック・アルバムも素晴らしい完成度だとは思いましたが、メロディの魅力という点では個人的には本アルバムの方が上でした。

またマーティ・フリードマンの流暢でメロディアスなギタープレイも、その印象を色濃くしてくれます。彼のギタープレイというのはアメリカ的でもヨーロッパ的でもない(和風ってわけでもないですけどね)独特の風情があり、それが本バンドの妖しさにマッチしているのだと思います。ただ本アルバムというか、Megadethにおける主役はあくまでボーカルメロディであると私なんかは思いますが。

この次の6thアルバム『Youthanasia』は、Megadethらしからぬメロディにポップさと暖かさを感じる曲がちらほらありますが、まだまだデイブ・ムステインの妖しいボーカルは健在で、こちらもいいアルバムであり、お勧めです。

Megadethに似ているバンド…やっぱりMetallicaですか。四天王の中では似ている面も多いので。初期のころであればKreatorなんかも近いと思いますし、あと印象的なメロディや曲構成という意味で、ちょっと意外なIced Earthとかもどうぞ。

しかしマーティさんは日本で活躍しすぎだね。つーか馴染みすぎだね。

My Favorite Song : Architecture of aggression

Similar Artists:Metallica,Kreator,Iced Earth