2007-03-26

Pressure - Chroming Rose

(No Photo Image ... Sorry)

1992年の3rdアルバムです。
ドイツのバンドです。ただメンバー全員が生粋のドイツ人ではなく当時は東欧系のメンバーも入っていたようです。現在は…知りません。

今でも私の心に残る、非常に残念なアルバムです。
今まで聴いてきたアルバムの中で、その完成度に対して正当な評価が得られなかったアルバムを挙げるとすると、私の中では真っ先にこのアルバムが思い浮かんで来る、そんなアルバムです。

さて、本バンドを知っている人ならば、普通推薦するアルバムは1st『Louis XIV』、2nd『Garden Of Eden』を挙げることが絶対的に多いと思います。それには私も全く異論はなく、元々本バンドはHelloweenを筆頭とするメロディック・スピードメタルのカテゴリ内で語られるバンドであり、彼らのキャリアのピークも前述のアルバム2枚だったからです。

彼らの音楽とそのスタンスは独特で、確かにやってることは高品質スピードメタルなのですが、ギターの音がExodusのようなクランチ風味だったり、曲に(Hellowennでもたまにその風潮を感じることが出来る)コミカル調な面を更に強くした雰囲気があり、それがまたB級風味を醸しだし、本バンドの魅力の一つともなっておりました。

しかしながら、当の本人たちも多分気付いていたのでしょう。「今のままでは、これ以上バンドとしての発展は望めないだろう」と。
確かにジャーマン・メタルの中では十分にトップクラスの知名度でありながら、良くも悪くもジャーマン・メタルのB級臭さを一番強く感じさせるバンドではあり、このままでは「この位置止まり」というのは、聴いてる側からも伺い知ることが出来ました。

そこで彼らは一皮むけるために賭に出ます。HelloweenではなくAcceptからの正統進化を目指すかの如く、アルバムにミドルテンポの曲を1曲目から据え、スピード感を殺す代わりに重厚感と構成の質を高めたアルバムを作ってきたのです。そのメロディは高品質であり、実際彼らにこんな本格HMの曲を作成することができるのかというぐらい恰好良く、そして何よりアルバム名が示すように全ての曲がシリアスであり、緊張と気合いを感じさせてくれました。今までヨーデルやハッピーバースディをふざけたメタル曲にして世に放ってきたバンドとは思えません。また、アルバム内にスピード曲が全くないわけではなく、全てのアルバムを通しても最高級の出来である4.Skyline of the Worldなど、曲単体としてもアルバムの構成としても非常に優れた出来だったと思います。

しかしながら時代は彼らを見捨てることになります。まだ時代はメロディック・スピードメタルのニーズが高く、彼らのファンが欲していたのは退屈なミドル・テンポの正当派HMではなく、あくまで爽快感溢れる突っ走りスピードメタルだったのです。本バンドの従来からのファンにはアルバム全体を通して好意的な評価はされず、また本来こういった類の曲を好んで聴く人たちには、バンドのカテゴライズ面から、聴いてもらう機会すら得られませんでした。(まぁそれをバンドの責任にするのはお門違いであり、本来はプロモーションの問題なのでしょうが)

当時は少数ながら本アルバムを正当に評価するコメントも見た記憶がありますが、またまずかったのはこのアルバムのショックが尾を引いたのか、次の4th『New World』が焦点のぼやけた駄作だったことです。かくいう私も4thを聴いた時点でこのバンドの終焉を感じてしまったのですが、もし『Pressure』が正当に評価されるか、現在のような、例えばEdguyなんかが評価されている状況でリリースされていたとすれば、またその状況も変わっていたことでしょう。かく言う私も本アルバムの全体的な質の高さに気付いたのは、しばらく後だったように記憶しています。

あまりにも埋もれされるには惜しいアルバムなのですが…本当に彼らはついていませんでした。おそらく世の中にはこういう感じで消え去っていく才能は数多くあるのでしょう。それをリアルタイムで聴いて感じた私には、逆に本アルバムを今後忘れることはないと思います。

繰り返しになりますが、HMアルバムとしてはかなり上級の出来なんですよ。MegadethやらAnnihilatorが好きな人であれば必ず気に入ると思うし、Edguyなんかとも同系統であると言えるでしょう。もし機会があれば是非聞いてみてください。実に哀しいアルバムです。

My Favorite Song : Metamorphic Dreamer

Similar Artists:(このアルバム限定で) Accept,Annihilator,Edguy

2007-03-17

Saosin - Saosin

Saosin
Saosin


2006年リリースの1stアルバムです。
アメリカはオレンジカウンティのバンド、ということはAtreyuなんかと同郷ですね。

スクリームを排除したスクリーモというのは果たしてジャンルとして成り立つのかという疑問がありますが、本バンドは一応スクリーモの最終形態という呼称で紹介されることが多いです。ただし曲の中に目立った叫び声は入れられていなく、普通のエモバンドとして紹介されても問題ないと思いますが、確かにこのアルバムを聴く限りでは、スクリーモ側に置いておきたいのも納得出来ます。

曲のメロディや構成はThursdayなんかを想起させる、ある意味フォーマットの知られた憂いのある湿っぽさなんですが、このバンドの特徴はその楽曲に普通にハイトーンボーカルを用いて歌い上げていることにあると思います。正に「歌い上げるスクリーモ」。これによりドラマティックの度合いをスクリームなしで維持し、バンドの雰囲気としてスクリーモ風味を残すことに成功しているんだと思います。

この系統のバンドでは重要なメロディの質もいいし、演奏も実にタイトで、パンクっぽい軽さはあまり感じません。むしろLostprophetsとかHoobastankあたりに近いのではないでしょうか。もし彼らがThursdayをプレイしたらこんな感じの曲ができるんじゃないかなあ。

このバンドを聴いていて思ったのは、そもそもスクリーモというジャンルはバンドの表現力の稚拙さから出来たジャンルではないのか、ということ。もちろん感情の移入や曲の構成からスクリームを楽曲に取り入れること自体は否定はしませんし、効果的に使用しているバンドがあることは認めます。ただ過去に出てきた著名なスクリーモ系バンドがどんどん曲中のスクリーム比率を少なくしてきている事実と、挙げ句の果てには本バンドのような形で表現の質の高さを提示されて、しかもこのバンドをスクリーモという位置づけで定義してしまった場合、結局この手のタイプの楽曲ではスクリームする意味は全くないという結論には至らないんでしょうか?

上記の疑問に答えてくれるバンドは、個人的にはAlexisonfireとかSilversteinだと思っているのですが、今後本アルバムを超えるような質のアルバムを他のスクリーモバンドが提示できなかった場合、スクリーモというジャンルは過去の遺物として葬り去られていくでしょう。その意味である意味最後通牒のような意味合いを持つアルバムでもあります。

北欧やアイスランドあたりの北の方のバンドが持っている冷たい寂寥感も有した希有なバンドだと思います。ただ雰囲気としては冬というよりは寒い夏。そんなわけで是非聴いて欲しいアルバムですね。ちなみにジャケットのカブトムシはあまり気にしない方がいいと思います。

My Favorite Song : Follow the Feel

Similar Artists: Thursday,Silverstein,Lostprophets

2007-03-11

When Everything Falls - Haste the Day

When Everything Falls

2005年リリースの2ndアルバムです。
アメリカはインディアナポリスのメタルコアバンドです。

残念ながらこのバンド、2007年3月現在未だ日本デビューは果たしておりません。個人的には本バンドはメタルコア勢の中でもトップクラスの実力と楽曲をもっていると思いますので、何故日本デビューがこんなに遅れているのか不思議で仕方ありません。

スクリームパートの突進力、メロディアスパートの煽情力もそれぞれ一級品ですが、本バンドの魅力はそのメタル的なギターの音と使い方です。多分ギターはジャンルとしてはメタルが好きなんでしょうね。リフの使い方や、曲の所々に出てくるソロの切り込み方が、正にメタルに影響されました、といった風情で出てきます。いわゆるギター単独でその曲の主メロになりえるIn flames的なアプローチもありますし、Iron Maiden的なキメもあり、アメリカのバンドにしては曲の構成面での凝り方を特徴にした珍しいバンドだな、という感じを受けました。また、通常のメロディアスなパートでも、バックの演奏はメタルのような(というかメタルそのものですね)音で、あまりクサメロ臭が強くないため、メタルコアの中でくくらずに、いろんな層にアピールできる楽曲が多いと思います。

個人的には本バンドの弱点は、スクリーム時のボーカルの軽さかなと思います。軽めの音質で高いところをぎゃんぎゃん喚いているスタイルは劣化版Cradle of Filthといった感じで、ちょっと2流以下のブラックメタル的な印象をうけてしまいます。ここがもっと印象的に使えるようになると、このバンドはもっとかっこよくなると思うんですけど、それは次作以降に期待ということで。

まぁ結局この手のバンドってのは、どれだけ良質のメロディをサビに持ってこれるかというのがポイントの一つ(というか評価の8割方を占める)な訳ですが、このバンドはボーカルだけではなく、ギターリフも非常に練られた良質のメロディをもっており、これが他のメタルコア系のバンドと一線を画しているという感じです。1stも良いアルバムでしたが、本作では曲の構成がよりコンパクトになり、スクリームとメロディを歌い上げる部分のメリハリもついて、非常に良質のアルバムとなりました。

AtreyuとかIt Dies Todayとか、Triviumとか好きな人は聞いてみて絶対に損はないでしょうし、UnderoathやHopesfallも全然いけると思います。むしろAtreyuやHopesfall、Silversteinを洗練させたように感じる時もあるぐらい、完成されているバンドだと思います。

あと、このアルバムの最後の曲である12.Long Way Down。これGoo Goo Dollsというバンドのカバーなんですが、オリジナルより演奏がヘビィであり、テンポアップもしてノリがよくなっており、本バンドのオリジナルとしても遜色ないようなかっこいい出来になっています。(まぁ元々の曲もかっこいいんですけど)個人的に、カバーをうまく自分色にアレンジできるバンドは、その後の曲も変わらず大好きになる率が非常に高いので、本バンドには非常に期待しております。新作が2007年3月予定とのことで、またよければ良いなぁ。

My Favorite Song : When Everything falls

Similar Artists:Atreyu,It dies Today,Trivium,Underoath,Hopesfall